「木村さんをオカズにするのはやめてくれ」


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妻が「お尻を拭いてもいい」夫の共通点

合わせてお楽しみいただけますれば幸いです。


☆☆☆
 
陰口というのは、どうしてこう小気味いいかね?




なんつーの?

脳内アドレナリンが出るっつーか?

 

道徳的に言うならば陰口は「よろしくない行い」である。

よろしくないのであるのだが大体人間の快楽っつーもんは
「よろしくない行い」に集中するのだ。 
 
凡人が快楽に走るのは無理からぬところなのである。


アタシにはこの異様な快楽を求めていた時代が確かにあった。

当時30代前半で幼児二人を抱えていた専業主婦のアタシは
木村さんという存在に日夜悩まされていた。


近所に住む木村さんは朝は9時から木村さん家の一人息子を我が家に送り込む。
 
その息子はお昼になっても帰らない。
 
無理矢理帰しても1時になると再びやって来て今度は5時まで帰りやがらない
という非常にムカつく状態がほぼ当たり前の日常になっていた。


「どうしても鳥居さん家で遊びたいってこの子が言うもので・・・」

そーかい。
アンタの4歳の息子からは「ママが行って来い」って言ってると聞いてるが?


「もうホントにお宅に行きたがるから私も困ってるんだけど、
迷惑だったら(息子を)外に出してぇ」と木村さん。
 

4歳が外に出ると3歳の家の息子も行きたがるんだよ!
 
アタシはまだ掃除も洗濯もしてないんだよっ! 
 
忙しい私は一緒に外には行けないのっ! 
 
アタシに外に出せと言う前にテメ~で息子を閉じ込めとけ!

 
「いつも悪いわ~」と木村さん。
 

 悪いと思うなら二度と来るな!!
 

しかしである。
 
これらはみんなアタシがお腹の中で反芻する言葉で、
それを面と向かって木村さんに言うことはできなかった。

なんと不条理なことにアタシはノミなのである。
ノミの心臓はイザとなると全くといっていいほど役立たず、
何も言えずエヘラエヘラと愛想笑いを浮かべるという情けなさ。

しかしある日ついにアタシは彼女に直接言ってやった! 
偉いぞ、アタシ! かましたれ!
 

「たまには木村さんのお宅で家の子も遊ばせてもらえないかしら?」

やった! 大ホームランだ!
 
木村さんの子が「帰りたくない」と言って我が家の玄関でひっくり返って泣き喚き、
 
その余波でやっと寝かしつけた家の赤子も火がついたように泣き出したから
 
アタシはぶち切れた。

 
木村さんはこう言ったと記憶している。


「え? (子どもたちが)家に来たら家が汚れちゃう」

 
家の子どもはバイキンか!?

意表を突く返事にアタシは言葉を失った。
 
せっかく勇気を出して言ったのにぃ! クソー!!


当然、アタシは怒り心頭である。
 

しかしアタシは常に「ええかっこしぃ」が大好きで人の評価が大変気になり
 
いつもいつも「いい人」でいたかった。
 
だから他の誰かに「木村さんとついでにその子どもは大嫌い」とは言えなかったのだ。

当然怒りの矛先はダンナに向かう。
 
誰かにぶつけなければとてもじゃないけど居ても立ってもいられないほど
 
イライラしていた。

アタシは夜中に帰るダンナの横にまとわりつき
 
「木村さんの本日の悪行」を並べ立てては怒っていた。

ある夜、いつもどおりの食卓でいつもの話を延々と繰り返す妻にダンナは言った。


「頼むから木村さんの話をオカズにするのは止めてくれ」

 
満員電車に揺られ疲れ果てて夜中に帰って来るダンナには
 
毎夜食事の度に木村さんの話をされるのはたまったもんではなかろう。

わかった。私も鬼じゃない。
 
そうまで言うなら頼まれたってしてやんねーよっ!

人様の悪口は家の中に留めておきたかったが、こんな妻の心情も
 
思いやれないようなダンナに何を話しても所詮無理! アタシはアタシの道を行く!

 
そこでアタシは近所のママ友たちに思い切って話を聞いてもらうことにしたのだ。

すると出るわ出るわの木村さんの悪口、罵詈雑言。
 
我が意を得たアタシは水を得た魚のごとく生き生きとした。

「よかった。アタシだけじゃなかったんだ!」

泣くほど嬉しかった。


しばらくは本当に楽しい日々だった。
 
毎日毎日何処かの家に集まっては「木村さんの昨日の行状」を教え合った。
 
彼女がああ言った、こう言った、ああやった、こうやった、有り得ない、
 
許せない、頭おかしいんじゃない?


当の本人が登場した途端、何事もなかったかのように別の話題に移るスリルも
 
またたまらないものだった。


女にサモワール(お茶会)は必要悪なのだ。

「刺繍」(Mサトラピ著/明石書店)というイラン女性のおしゃべりを綴った本が
 
あるが、そこにはこうある。

 
「女同士で陰口を叩く、それは心の換気よ」

陰口を叩かなければやっていけない時期がある。
 
それで団結していく仲間もある。快楽は悪くない。
 
しかしである。快楽は一瞬だ。

 
この木村さんを排除することで結束していたグループの蜜月は何年も続かなかった。


木村さんが引越したからだ。
 
禁断の蜜を舐めた集団は次の蜜を求める。ターゲットが変わるのだ。
 
しかも怖ろしいことに仲間内の蜜を舐めたがる。
 
そうなるとグループの崩壊は時間の問題である。
 
水を得た魚のはずだったアタシには「釜中の魚」になるなんて
 
思いもよらないことだった。

何度も言うがそれでも陰口は必要悪だ。
 
人は愚痴を吐き出して綺麗な空気を吸い込むのだ。
 
何とか生きていくためにも必要なのだ。しかしである。
 
陰口をオカズにしてはやっぱりいけない。

誰かの陰口は調理のスパイス程度に抑えておくのが
 
女の付き合いにおいて返り血を浴びない秘訣なのだ。


※「釜中の魚」・・・釜の中で泳いでいる魚がまもなく煮られて死ぬことも
 
知らずにいること。最悪の事態も知らぬこと。
 
 
 
 
 
 

 

コメント

  1. 妻の心情も思いやれないダンナって言いますが、まず貴方がダンナさんの心情を思いやれてないですよ。

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    1. おっしゃるとおりです!
      そうなんですよ、自分に余裕がないと、中々、パートナーに
      思いやりをもつのはアタシごときだと難しかったです。
      でも、今は結構、学んだので、ましになったと思ってはいるんですが。
      夫婦も歩みを重ねていって、ナンボだなぁって思いました。

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  2. コラム読みました。こういう男性は嫁を愛してない訳ではないんですよね。なんとなく、景色の一部見たいに思ってる。なくなったら困るのだろうけど。
    息子はありがとうを言える男なので、いまのところそこは期待してます。偏差値は伸びないけど、良い夫にはなれそうかな、と。

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    1. 良い夫になれそうな息子さんを育てているのは素晴らしいですよね!
      近しければ近しいほど、景色になっちゃうのはダメですよね〜。
      やっぱり、一番近くに居る人を大事にしないといけないんでしょうが
      ギブ&テイクがうまくいかずに、難しいこともありますよね〜。

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  3. はじめまして!
    コラム読んで大きく頷いて、私だけじゃないんだとほっとしました。共感、共有したいのに、孫の誕生の際、先に孫に会った旦那のメールは迎えの時間の連絡だけでした。旦那は、フェイスブックの見知らぬ人達と共有、共感してるようです。
    だいぶ無関心の状態になりつつあります。

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    1. お孫さん、お誕生おめでとうございます!
      Facebookも一緒に楽しんじゃったらどうですかね?
      せっかく、子どもたちが巣立ってふたりになられたなら
      手っ取り早いのは飲みに行ったり、旅行に行くのがいいかと
      思うんですが、私は合わないのはもうどうしようもないので(笑)
      日々、破れ鍋にとじ蓋だと思って接しております(爆)

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