優しさは世界一の日本人 (下巻)


 日本人が震災時に行った「相互扶助」の精神は世界から称賛されていたが、通常では

起こり得ない危機に直面した場合、日本人はごく自然に「助け合う」ことが出来る民族

なんだと感じる。
 


何年か前に東海道線の踏切に乗用車が突っ込み、電車と衝突したために夕刻から朝まで全線不通となったことがある。
 

帰宅時間とぶつかってしまったため、各駅は大混乱になっていた。

たまたま、アタシは都会でそのことも知らずに飲んでいたため、気付けば終電一歩手前の

時刻である。

動いていないものは動いていないのであるから、仕方ないのであるが、少しでも我が家に

近づこうとするのが人の常であろうか、行けるところまで行くぜ!という希望溢れる群衆に従って、アタシも私鉄を乗り継ぎ、行けるところまで行き着いた。

 

しかし、動かないものは動かないので、群衆は今度はタクシー乗り場に集合する。

その時刻、午前1時。

 

駅前ロータリーはタクシー待ちの人で一杯なんだが、これが整然と淡々と並んでいる。

 

終電を過ぎて尚、不通状態であるとJRの決まりで、その人の最寄り駅までのタクシー券が配られる。電車は不通、バスも終バス終わりということでのタクシー券なのだが、そこは

財政難&人を多くさばく目的で、即席の4人組を作ることを要求されるのだ。

 

A駅希望者の4人組をその場で募って、タクシーの順番を待つということになるが、なかなか4人組になるのは難しい。

 

そうこうしている午前3時、ようやくタクシーの循環が良くなって来て、徐々に人を

さばけるようになってきた。

 

すると、こういうことが起きたのだ。

 

ごく自然にリーダーシップを取る人が現れ、長蛇の列に向かって「B駅、あと2名、誰か

いませんか?」みたいに声掛けをし、誘導してくれるのだ。

 

その人がやがて自分の順番でその場を去ると、今度は別のリーダーが現れ、同じように

誘導する。

 

並んでいる疑似家族たちもこの不幸な状態を怒る人は皆無で、お年寄りを優先させようとか、若い女の子を先にとか、そういう配慮もごく自然に行われていた。

 

それどころか、旧知の仲間のように世間話に花が咲く。

「明日は通常どおり仕事なので、このまま寝ないでおくべきか、それとも帰ったら

寝るべきか?」という議論で盛り上がる午前3時半であった。

 

このように「全員の不幸」となる事態には日本は強いと思われる。

 

アタシはこの理由のひとつに「大多数がサラリーマン」ということがあるのではないかと

考える。

 

学校教育も秩序を重んじることをやっているが、それよりも「企業内教育」ということが

大きいのではないかなと思うのだ。

 

通常、企業では新入社員に対して「研修」という名の元、社会マナーやら常識やらを

教え込むが、これが一般常識を知り、実践していく基本になっているのではないかと

勘ぐっている。

 

電話の受け方、名刺の渡し方、文書の書き方、上座の位置、お茶の出し方、ありとあらゆるビジネス上の「常識」というものを企業が金を出す形で学ばせている。

 

「研修」制度がない会社であっても、先輩が新人に教えているのは仕事だけではないだろう。

 

アタシのOL時代は四半世紀も前のことだが、研修もあったが、新人にマンツーマンで付く

先輩社員という存在もあり、その上には「お局」という存在もあり、相当、いろんなこと
 
叩きこまれたような記憶がある。

 

その中でも印象に残っている先輩社員の言葉がある。

「りんちゃん、仕事というのはやりたくなくてもやらなければならない。

どうせやるなら、笑顔で感じ良くやった方が自分自身が気持ちいい。

例え、どんなに小さな雑用でもね」

というものだった。

 

こういう流れが保守本流にあっての企業文化なのだと理解するが、企業人としての

「常識」と「節度」を日々、伝えての日本なのだ。

 

ただ、憂うのは、非正規雇用の増大である。

2014年11月の総務省労働力調査によると役員を除いた正規雇用は62%、非正規は

38%となっているらしい。

 

日本企業が伝統として「新入社員は仕事ができなくて当たり前」「教育コストをかけて

一人前にする」のが会社の役割と自らに課してきたことが、非正規雇用のせいで崩れてい
 
くのではないかという懸念である。

 

派遣社員は自社の社員ではないので、教育コストをかける必要がないのだ。

(既に教育を受けた人が、そのスキルに応じた仕事をするシステム)

 

派遣社員は企業での教育を受けられないのだから、高いレベルの仕事が出来ず、能力の差がつき、やがては給料の差となって現れるという問題があるが、それと同時に長い目で見れば、

このような「非常時」が起こった際にも、今までのように「整然とした秩序」が保たれる

のだろうかと、ちょっと心配になっているところである。

 

アタシはこういう意味でも、特に若い人に対しては「非正規雇用」ではなく「正規雇用」の

枠をいっぱい設けていただきたいし、就活失敗で「非正規雇用」になろうとも、「正規」に

いつでも転職できるという希望が持てる世の中であってほしいと願うのだ。
 
 
 
 
 

 

コメント

  1. 本当にそうですね。
    非正規の方々が社員教育を受けられず能力格差につながる…ワーキングプアになっていく。正規でもブラック職場に雇われたら潰される。
    若者たち、これでは希望も持てませんね。
    貧困家庭の増加も大問題です。
    お互いに助け合う気持ちを持たないと、日本の良さが消えてしまう。
    優しい人が多いはずなのに、なんでこうなってしまったのでしょう。
    人がいいだけでは生き残れないそんな怖さを感じながら、生きています。
    今日、雪道をびくびくしながら歩きましたが後輩に言わせると昨年私は転んで騒いでいたそうで…
    そういえば自転車で転んで、行き掛かりの高校生たちが、さーっと助けに来てくれたのを思い出しました。自転車を助け起こし、散らばった荷物を拾い集めてくれて。男の子も女の子も、ごく自然に助けてくれて、その子達も自転車で元気に走って行きました。
    うちの高校生にはこんなさりげない優しさあるかなあと不安に…
    若者たちを大切に育てなくちゃいけませんね。
    痛い思いをして、後輩たちに言われるまで忘れ去っていた自分にも呆れますが💦

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    1. なんだかね、生きにくさが強調される時代で、そりゃうつ病も
      増えるというものだよね。
      いやん、高校生に親切にされてよかったね!
      ももんがちゃんが助けやすい人柄ってのもあるよね、きっと。
      お嬢さんは大丈夫よ〜、とってもいい子に育ってるじゃん!

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