第14話 夜の警察署で



 仕事に何とか復帰したけど、毎日のリハビリが出来なくなってしまった。


休みの日は相変わらずのマイペースで1日を満喫し、リハビリも出来る。

 

そうだっ!

仕事の日は帰ってから、リハビリすればいいんだ!ってことに

ようやく気が付いたのは、年が明けて、2017年になってからだった。

 

「今日、帰宅したら、歩いてくるから」と家族に話をした。

 

寒くても、逃げられないよう自分を追い込むための宣言を、

何故かしてしまった。

 

もたもたしてたら、家を出るのが20時をずいぶんと過ぎていた。
 
 
 

 

30分くらい歩くことが出来れば、初日としては上出来だろうと思い

寒さ対策に「ネットウォーマー」と「ニット帽」そして

「上下黒のジャージ」を身に着けた。

 

家を出て5分くらい歩くと、ジュースの自動販売機がある。

 

その機械の前に、カードが落ちていたので、つい拾ってしまった。

それは、高校生が落とした通学用の定期が入ったPASMOだった。

 

「今日は金曜日。明日、部活で使うんだろうな。おまわりさんに届けるかぁ」

 

一番近くの交番は無人だし、駅前交番もおまわりさんがいない時があるから

少し歩くけど、警察署まで届けることにしよう。

 

自宅には「落とし物を届けて来る」と携帯電話を使って連絡し

目的地に向かって歩き出した。

 

警察署は最近建て替えられて綺麗になっているし、一度、行ったこともある。

玄関を入って、まっすぐに歩いて、突き当たって、右に曲がれば

遺失物の窓口がある。

 

頭の中では、建物に入ってからの行動をシミュレーションしていた。

 

もう少し歩けば警察署というところまでやってきた。

私立の女子校を左手に見ながら進む。結構、風が強くなってきた。

 

ニット帽を目深にかぶり直し、ネットウォーマーも鼻先まで上げて

目的地までと進んだ。

 

ほどなくして、警察署が見えて来た。

 

ガラス張りの入り口はとても明るい。

自動ドアを入って、遺失物の窓口目指して、そのまま進もうとした時、

ふと、右側を見てしまった。

 

そこにはカウンターがあり、奥には横に3列ほどの机が並んでいて

おまわりさんが、こんな時間なのに、何故か沢山、本当に沢山

座っているじゃないか。

 

偶然、ど真ん中に座っているおまわりさんと、目がバッチリ

合ってしまった。

 

そしたら、そのおまわりさん、間髪入れず、鋭い目でオレを睨み返し

さらには右肩をグッと後ろに引き、身構え戦闘モードに突入した。

 

それを合図に両隣のおまわりさん2人も、今度は、左肩を後ろに引いて

身構える。

 

瞬時に「やられる!」と思った。

 

ものすごい殺気を感じ、一瞬だが、背筋がゾッとした。

 

ニット帽を被ったままだし、目だけしか出ていない黒ずくめの

オジサンを不審者として対処する準備が、何のためらいもなく

整ったようだ。

 

何も悪いことをしていないのに、何故か「すみません」と謝って

しまった自分がそこにいた。

 

ニット帽とネックウォーマーをはずし

 

「あのぉ~、落とし物を届けに来たんですけど…」

 

その言葉を聞いたおまわりさんたちの顔から、戦闘モードが

溶けて消えていった。

 

テレビドラマで制服のおまわりさんたちは、悪者にすぐに

やられてしまうことが多いが、そんなことは絶対にないだろうと

肌で感じた警察署での出来事でした。

 

結局、初日は1時間を超えてのリハビリとなってしまいました。

 

なんだかなぁ~。

 

 

 

 

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