『ぼけますからよろしくお願いします』



 掲記タイトルのドキュメンタリー映画を


観てきました。
 



「おっぱいと東京タワー」というご自身の

乳がん闘病ドキュメンタリーで有名な

信友直子監督作品。

 

地方で老々介護を続ける監督のご両親を

撮り続けたドキュメンタリーです。

 


 ↑公式サイト

 

認知症になった85歳のお母様を

95歳のお父様が支えて、ふたりだけで

支え合いながら、暮らしている、その日常を

映し出している作品です。

 

老いをダイレクトに見せ続けていく訳ですから

観ていて、切なくも、哀しくもあり

でも、限りなく崇高で、人間賛歌のようです。

 

私は親が認知症になるまでは、人間って

ある日、突然、一気に認知症になるように

思っていたんです。

 

そんなわけないのに、今まで、見たことが

ないせいで、しかも、自分の親がボケるなんて

1ミリも考えたことがなかったので

そういうイメージだったんです。

 

でもね、現実は悲しいことに違います。

 

ボケ行く自分自身が「おかしい」ってことを

十分すぎるほど感じ、それを否定し、混乱し

それでも、何かが壊れていくことを認めざる

を得ない。

 

どうしたんだろう?

こんなはずでは?

違う、違う、これは自分ではないって

葛藤を一日、一日と積み重ねていく作業が

ボケるってことなのかもしれません。

 

「迷惑かけるね。ごめんね。」

ってお母様が娘である信友さんに言うんですよね。

 

「家族じゃない?」

「お母さんは私がガンの時にも色々助けて

くれたじゃない?」

 

と信友さんが答えます。

 

「仕事を辞めて、帰ろうか?」という娘に

95歳のお父様は「自分が元気な内は自分が

みるからアンタはアンタの仕事をしなさい」

って娘に東京に戻るように促します。

 

買い物に行き、荷物の重さにへたり込む時でも

「一歩を出さねば、何事も始まらん」と

言い切り、また歩みを進めるお父様。

 

「生きる」って日々の「暮らし」なんだなって。

それを淡々とこなしていくことが幸せなのかも

しれない。

 

やってあげることや便利な電化製品を揃えることが

支援なんじゃなくて、その暮らしをそっと

支えることが一番、親たちはやって欲しい事

なのかなって

 

私は色んなものを母から取り上げ過ぎたんじゃ

ないかって、心痛むものがありました。

 

実際に老いてみて、はじめて老人の気持ちが

分かるのでしょうね。

 

私は多分、自分のことで精一杯で親の

切ない、どうしようもない思いを汲むことが

できなかったんだなぁって思いました。

 

耳の遠いお父様、アルツハイマーが進むお母様の

会話はお互いに気持ちをぶつけ合いながらも

 

夫婦って、こうやって同じ時を紡ぐんだなって

夫婦にしか分からない縁(よすが)を感じます。

 

昔、姑が私にこう言ってくれたことがあります。

 

「りんちゃん、喧嘩できるのも、相手がおる

からやで~。それを忘れちゃいかんよ…」

 

きっと、あなたも観たら、遠くに住むご両親の

元に駆け付けたいという気持ちになるでしょう。

 

そして、きっとご両親は心配するあなたに

こうおっしゃるのではないでしょうか?

 

「ふたりでいられる内はふたりでやっていく」と。

 

戦争を経てきた世代の覚悟と品格を感じる

映画です。

 

「老いも、また、善し」

そう思わせてくれた、稀有な作品だと思います。

 

そうそう、ひとつ、強烈に思ったことが。

 

壮絶な場面も沢山あるし、決してモデルルームの

ようなお家でもないんです。

 

でもね、画面一杯から品が漂ってくるのは

なんでだろう?って。

お父様は今も英語の勉強を続けている程の

勉強家。お母様も若い頃から様々な趣味を

なさり、玄人はだし。

かつて台所はお母様のお城でした。

 

信友さんをあの時代に東京大学に入れた程の

ご両親。

 

これはご家族の背景なんですが、私は

このシーンにすごく惹かれたんですよね~。

 

お父様が「珈琲を煎れるけど飲むか?」と

お母様に尋ねるシーンがあって

映画では繰り返し、珈琲を飲むシーンが映し

出されます。

 

それがね、必ず、カップ&ソーサーで

出てくるんですよ。

 

ああ、このお宅は日々の暮らしを丁寧に

ちゃんとちゃんとやって来られての

今なんだなぁって・・・。

 

下北沢の映画館には若い人が沢山、来ていました。

 

私たち、介護世代ももちろんですが

若い人たちにこそ観て頂き、このお正月

おじいちゃん、おばあちゃんの元に

元気な顔を見せに行って欲しいなぁって

思いました。

 

コメント

  1. 昨日、下北沢で観てきました~。

    母にも同じ事あったなぁ…と思いながら見ました。

    転んで頭を打って、内出血で瞼が紫色になったこと。

    お母さんの お気持ちも、母がよく口にすることと似ていました。

    下北沢トリウッドは、30日までの上映だそうです。
    小さいシアターなので、これから、ご覧になる皆様、HPをご覧になってから お出掛けください。
    営業時間は、当日初回上映の20分前~です。

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    1. おー!?観てこられたんですね?
      下北映画館情報ありがとうございます

      ウチの母も顔中お岩ってことが度々あって
      あの紫やら青やら黒やらの打ち身が
      ドンドンと下に移行するってことが不思議でした。

      色んなことを思い出させ、また考えさせる
      映画ですよね~。
      ご感想、ありがとうございました!

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